敷地は、かつての大阪商業の中心地「船場」のど真ん中にあって、間口5.6m、奥行き36.4mの典型的な「うなぎの寝床」。また、前面道路には問屋街のアーケードが連続し、両隣は8階建の建物が隣地いっぱいに建っている。安全で快適な保育園をどのような手法で創るか。幸い敷地奥に、大阪市中心部独特の「太閤下水」と呼ばれる背割り下水があった。この空間を利用して、前面道路側と背割り下水側の2方向に避難経路を設けることで、3方向の避難ルートによる積層化が可能となった。細長い敷地を活かし中央部に光庭を設け、その両サイドに縦動線(EV、屋内階段)を設置、この空間を中心として前後2つの居室を設け、そのシステムを6層積層し、屋上は一部を園庭として天空光を有効に利用する。都市部の狭小地にあって、明快でわかりやすい空間構成がこの建築の特長である。
塔状比の限界、杭のスパン、抑えられた床荷重等、種々の構造上の悪条件を克服しながら、この都市型保育園は生まれた。近隣に増え始めた共同住宅の待機児童の受け皿として、ひとつの解決策を示したのではないか、と考えている。
所在地 大阪市中央区
主要用途 保育所(児童福祉施設等)
構造 鉄骨造
規模 地上6階建+PH階
敷地面積 213.97㎡/64.73坪
建築面積 175.31㎡/53.03坪
延床面積 915.25㎡/276.86坪
設計監理期間 2013/4~2014/12
施工 藤原工業株式会社