化粧品会社の新本社ビルである。このプロジェクトには3つの課題があった。1つは、近い将来起こりうる自然災害、特に大地震に対して、安全性を確保すること。本社ビルとして、事業継続可能なように、南海トラフ地震のみならず、内陸直下型の上町断層地震に対抗できるようシミュレーションを重ね、高減衰ゴムによる制震装置をバランス良く配置した構造計画となっている。2つめは、敷地のポテンシャルを最大限に活かしきる、ということ。角地の特性を活かし、曲面を描くカーテンウォールにより最大限の床面積を確保するとともに、北西側にコアをコンパクトにまとめ、南東側に天井高2,800の快適な事務所空間を配した。3つめは、女性化粧品を扱う企業の本社ビルにふさわしいデザインに、ということ。低層部の大きな開口部は、社会に開かれた誠実な企業イメージの表象であり、その低層部を基壇として、上部のカーテンウォール部は将来の更なる発展、展開への意味を込めた。日射のコントロールも兼ねた縦方向のフィンは、見る角度によりその表情を変えながら、ファサードにリズムと連続性を与えている。また、7割以上を占める女性社員の意見を尊重し、外光の入る明るい水廻りを計画した。「真の美しさとはバランスのとれた健康美である」という企業理念が内部空間にも表現できたのではないかと思う。
所在地 大阪市中央区
主要用途 事務所
構造 鉄骨造
規模 地上10階
敷地面積 533.54㎡/161.40坪
建築面積 452.92㎡/137.01坪
延床面積 4,484.19㎡/1,356.47坪
設計監理期間 2014/11~2017/3
施工 株式会社藤木工務店大阪本店